午後からの仕事を終えて帰ったのは夜8時頃だった。
嫁はんがいれば家の中は既に暖かいが、今は外国で仕事の研修中だ。さすがに無人の家を暖房しておくわけにゃいかん。寒々とした家でまずストーブを点け、すぐには暖まらんのでファンヒーターも点け、台所で晩飯の支度にかかる。
そしてトイレに行き、水面に氷が張っていないことに安心しながら用を足し、流しレバーを回す。
・・・・・水は流れたが、その後タンクに給水する音がしない。
しもた!もう凍結してもうたか!
外気温は-5℃。台所やボイラーはこの程度なら大丈夫だが、家の端っこにあるトイレはこの時間で凍ってしまったようだ。無人で数時間も使われていないからか・・・。
北海道など北国では、冬場に何もしないと水道が凍結し、翌朝には水が出なくなってしまうことがよく起こる。特に私の住んでいる家のような古い住宅になると尚更だ。
よって寝る前には水道の水抜き栓を操作して、管に残っている水をすべて地中に流してしまう「水落とし」という作業をしなければならない。これはトイレに限ればレバー二つの操作で済む話だが、まさか真夜中になる前に凍結してしまうのは予想していなかった・・・。
とりあえず、風呂の残り水もあるし、翌朝暖かくなったらファンヒーターで暖めるか。
そして翌朝。だいぶ日が昇ってからトイレに行き、レバーを上げる。
・・・やはり流れん・・・。
トイレで1時間ほどファンヒーターで配管に熱風を当てる。
・・・それでも流れん・・・。
ここでようやく事の重大さに気がついた。
この時間になって、これだけ暖めても融けんということは、床下でかなり大規模に凍結しているということだろう。
ということは、このまんま夜になったら中途半端に融けた部分も更に凍ってしまう。
凍って融けてを繰り返したら、やがて管が破裂するのは私みたいな素人でも予想が付く。何とかせんと・・・。
一瞬色めきだったが、こういう時のために「解氷機」というのが存在するのを思い出した。しかも知り合いが持っている筈だ。それが使えるなら水道屋さんを呼ばなくて済む。それで直りますように・・・!
「やっちまったねぇ~。朝になったら融けるなんて甘いな。凍ったらすぐにやらねと破裂さすぞ~」
二つ返事で貸してくれ、使い方も教えてくれた。感謝!
パイプの床から出ている部分と、水抜き栓とをクリップで挟む。この間で電気を流して水道管を発熱させ、氷を融かすらしい。何とも便利なもんがあるもんや・・・。コンセントに繋ぎ、スイッチオン!
凄い・・・。やはり「餅は餅屋」というべきか。数時間の苦労と心配が、ものの1分足らずで解決したのだった。
この小さな機械と、これを貸してくれた知り合いに後光が差していた。
古い家に住むなら気をつけましょう。